【家族信託】親が認知症になる前に

2018年11月26日


コラム監修: 寺杣 勇祐 司法書士(てらそま司法書士事務所

今回は、親が認知症になってしまう前に知っておきたい家族信託についてまとめていきます。

《2025年には65歳以上の認知症患者数が約700万人に増加!?》
65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症患者数が462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)であったが、平成37(2025)年には約700万人、5人に1人になると見込まれています。

(下記図①:65歳以上の認知症患者数と有病率の将来推計より)

※平成28年版高齢社会白書(概要版)より

 

成年後見制度を利用すれば…
認知症になってしまった場合、成年後見人を選任することにより本人に代わって法律行為をすることができます。しかし、これはあくまでも本人の財産を管理保全するための制度なので、積極的な資産運用(売買、贈与等)ができません。
 
 

家族信託制度を利用して事前に対策をしましょう。

認知症などによって判断能力が失われると契約行為ができなくなります。そのため、介護施設への入居費用の準備のために実家や収益不動産を売却したくても、売却行為自体が契約行為にあたるため、不動産を売却することができません。そこで、判断能力が低下する前に不動産や預貯金・株式等の財産を信頼できる者へ信託する制度が家族信託制度です。

家族信託はどんなことができるの?

認知症などによって判断能力が低下する前に不動産や預貯金・株式等の財産を子供などの家族に信託することで不都合を未然に防ぐことができ、より柔軟で自由な財産の活用を選択することができます。

 

1.財産の管理・運営・処分に関する権限を子どもに委託することで、財産の事実上の凍結を防ぐ
2.孫の代まで相続人を決める
3.詐欺や訪問販売から両親の財産を守ることができる
4.障がい者の子が死亡した後の残余財産の帰属について指定する

 

財産の管理・運営・処分に関する権限を子どもに委託することで、財産の事実上の凍結を防ぐ

子どもは親の財産を活用して、介護費用を工面することもできるようになります。親から子供に財産の管理権限を移行して、法律の裏付けもとに財産を自由に運営できるようにすること

孫の代まで相続人を決める

遺言では自身の相続について、遺産の分割方法(例:長男に自宅、長女に預金を)定めることができますが、二次相続についてまで定めることができません。例えば先祖伝来の土地を直系の相続人に相続させたいと考え、長男に相続させたとします。長男には妻と子がおり、その後長男が亡くなったときに、遺産分割で妻が相続し、売却してしまうかもしれません。このような事態を防ぐためにも信託は有用です。信託受受益者を本人、長男、孫、ひ孫と定めておくことができ、あたかも家督相続のように代々相続させることが可能となります。

詐欺や訪問販売から両親の財産を守ることができる

家族信託では、両親の財産の管理運営をお子様の権限で行うため、オレオレ詐欺やしつこい訪問販売によって財産が失われる心配はありません。

障がい者の子が死亡した後の残余財産の帰属について指定する

障がい者の子を持つ親としては自分が亡くなった後の子の財産管理や身上監護は何よりも心配な事です。家族信託では財産を託し、子の面倒を見てくれる相手を自分で決めることができます。また、障がい者の子が死亡した後の残余財産の帰属についても定めておくことができますので、相続人不在で遺産が国庫に入ってしまうようなことも避けられます。

 

家族信託を利用した相談事例

l  状況

Sさんは渋谷区在住で、未婚で子はおらず、両親も他界し、兄弟姉妹もいません。80代前半で、今のところは元気ですが、体調不良もあり今後の生活や、所有するアパートの管理について不安を感じていました。高齢なので一人で生活するよりも、老人ホームへの入所を希望していますが、そうするとアパートの管理が難しくなります。身の回りのお世話をしてくれている親戚であるRさんに管理をお願いし、将来的には自分が亡くなったときには、全財産をRさんに譲りたいと考えています。

l  提案

アパートの管理についてはSさんとRさんの間で信託契約を締結し、Rさんに管理してもらうことにしました。また、信託受益権はSさんが持つことで、贈与税がかからないようにし、Sさん死亡時にはアパートの所有権はRさんに移るようにしました。その他の財産については公正証書遺言を作成し、Rさんに遺贈することとしました。

l  結果

アパートについては、Rさんが登記名義を取得し、今後の賃貸借契約の締結や、賃料の受領、公租公課の納付などを受託者の立場で堂々と行うことができるようになりました。また、将来Sさんが亡くなった際には全財産がRさんに渡り、Sさんの遺志が叶うことになります。

相続が発生してから、ご両親が認知症になってからでは間に合いません。事前に相続対策を行うことで、相続が発生した場合に揉めることなくスムーズに手続きをすることが出来ます。弊社は相続をはじめとした様々な問題に対応できる専門家と提携しております。どんなことでも構いません。どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ

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