インタビュー協力:佐藤和基税理士(佐藤和基税理士事務所)
払いすぎた相続税を取り戻そう!
国税庁の調査によると、平成28年に亡くなった約131万人のうち、相続税の課税対象となったのは、約10万6千人(約8%)に上りました。これは前年を上回る結果となりました。
平成25年度の税制改正により、相続税の課税対象の範囲が広がったことにより、相続税の払いすぎに対する関心も高まってきているように感じます。
そこで、今回は『相続税還付、相続財産再鑑定』の専門家である、佐藤和基税理士にお話しを伺いました。
▶相続税還付ってなに?
相続税とは払いすぎた相続税を取り戻す業務です。
国税局の統計情報によると平成28年度の相続税還付の金額は13億4200万円で、東京だけでも4億5,600万円に上ります。
▶相続税還付は誰でもできる
相続税を納めた方で、被相続人が亡くなってから5年10ヶ月以内であればどなたでも申請することができます。
▶他の相続人の同意は必要なのか
相続税還付は他の相続人がいても単独で行うことができます。そのため他の相続人の同意は必要ありません。
しかし、遺産分割の際、揉めていない場合には、相続人の皆さんでご依頼されることが一般的です。そうしないと、他の相続人からなぜ教えてくれなかったの?と、後に揉め事に発展してしまうことが考えられます。
▶物納や、既に売却している場合
相続税を物納した場合や、相続した不動産を既に売却してしまった場合でも、相続税還付は可能です。相続財産の評価は、あくまで亡くなった当時の価格で評価するため、売却後も還付請求はできます。
▶ちゃんと税理士に依頼したから、ウチは大丈夫!
相続財産に、土地、建物等の不動産や自社株を含んでいた場合、相続財産の評価に差が生じやすいため、正しく評価されておらず、相続税を払いすぎて決まっているケースがあります。
まとめ —相続税還付とは—1.相続税を納付した方
2.被相続人が亡くなってから5年10ヶ月以内であること
3.相続税還付は単独でも行える
4.相続財産を物納、売却した場合も還付できる。
そもそも相続税を払いすぎないようにきちんと評価をしてくれれば・・・
▶どうして評価に差が出てしまうの?
税理士試験において「相続税法」は必須科目になっていません。そのため、税理士の資格をもっていても「相続税法」を全く勉強したことがない人もたくさんいます。このことにより、税理士といっても「相続税法」に詳しいとは限らないことが分かると思います。お医者さんのように、税理士にも得意分野、不得意分野があるのです。
▶評価が難しい土地(不動産)のパターン
土地(不動産)を評価する際に、現地調査、役所調査を実施していないケースが多かったり、仮に調査をしていても最大限の評価減ができていなかったりするケースが多くあります。
そこで、評価の難しい土地(不動産)のパターンをいくつか例をご紹介します。
①形がいびつな土地
形がいびつであれば利用価値が下がってしまうため評価減ができます。明らかな不整形地であれば失念する税理士はそこまで多くはないですが、微妙に不整形地として評価を下げることができそうなものについては失念しているケースがよくあります。
②隣地に墓地がある
客観的に見て墓地といえる程度の規模でかつ、路線価に織り込まれていない場合には、評価減の対象になってくると思います。また、隣接していない場合でも、評価地から視界に入る程度の近さであれば、評価減できる可能性があると思います。
③前面の道路が狭い
建築基準法上、道路の幅員は4m以上必要となります。道路の幅員が4m未満の場合には、建築基準法第42条第2項の規定により、指定を受けている2項道路である可能性が高くなります。2項道路の場合には、将来建物を建て替える際などに道路幅員が4mになるよう後退(セットバック)しなければなりません。セットバック予定地(イラストの斜線部分)については70%の減額が認められています。

④線路沿いの家
線路沿いで騒音がうるさい場合でかつ、路線価に騒音による利用価値の著しい低下が織り込まれていない場合には、評価減ができる可能性があります。騒音の程度(何デシベルか)、時間的発生頻度(どのくらいの頻度で電車が通るか)を確認し、評価減が可能な場合には、利用価値が著しく低下している宅地として10%の減額をします。

⑤崖地等の斜面にある
急傾斜地部分の地目は、恐らく山林や原野になってくると思います。近隣の純山林または、純原野の価格に比準して評価する方法などがあります。平坦地部分については、利用価値が著しく低下している宅地として、10%の評価減又は不動産鑑定評価をする方法などがあります。

⑥生産緑地
生産緑地に指定されている農地については、買取りの申出をすることができるようになる日までの期間に応じて、一定の割合で減額ができます。

⑦駐車場を含む土地
自宅と月極駐車場が隣接している場合、一体利用ではなく、評価の原則どおり地目別(自宅は宅地、月極駐車場は雑種地)で評価します。正しく評価単位を分けることにより、形がいびつな土地(不動産)となった場合には不整形地補正の減額等が可能になることがあります。

⑧広大地
その地域における標準的な宅地の地籍に比して著しく地積が広大な宅地で一定の要件を満たすものは、広大地評価で大幅な評価減ができます。(数100万円~数1000万円も減額できることもあります。)ただし、広大地に該当するのか否かの判断が非常に難しいのです。

⑨日当たりの悪い家
生活環境が悪い土地(不動産)の評価では、問題の大きさを客観的な基準で計測して数値化し、問題の影響を受けない付近の土地(不動産)と比較することで、どれぐらいの悪影響があるかを判断します。その悪影響の大きさによって、評価減ができる可能性があります。
この他にも、減額の可能性がある土地(不動産)の条件はあります。上記の土地(不動産)のパターン以外にも、正しく不動産評価ができていないことにより、相続税を払い過ぎているケースは考えられます。少しでも不安があれば、「相続税還付」に力を入れている税理士にご相談ください。
▶顧問税理士などにばれてしまう可能性
依頼者から直接顧問税理士に言うことがなければ原則ばれることはありません。ただし、以下の点に注意しないと、還付請求のことがばれてしまうことがあります。
注意点1■還付に使用する口座は顧問税理士に知られない口座にする。
※顧問税理士に見せている通帳の口座を利用すると、還付が入金されると相続税還付の依頼をしたことがばれてしまいます。
注意点2■被相続人が亡くなってから3年10カ月以内に相続財産を売却している場合は、そのことを還付を依頼する税理士に伝える。
※被相続人が亡くなってから、3年10ヶ月以内に相続財産を売却した場合、相続税の取得費加算の特例を受けている可能性があります。その場合には、還付に成功したときに、所得税の修正申告が必要になる場合があります。修正申告せずに放置してしまうと、顧問税理士に更正処分をする旨の通知書が送られてしまい、相続税還付の依頼をしたことがばれてしまいます。
注意点3■更生通知書と国税還付金振込通知書が届いたら顧問税理士に渡さない。
※還付請求をしてから3ヶ月ほどで更正通知書が届き、その後還付が認められた場合に国税還付金振込通知書が届きます。
相続税還付をしたらどのくらい戻ってくるの?
▶佐藤和基税理士に聞いてみました!
これまで、私が対応した相続税還付の場合、平均すると1件あたり1000万円程の相続税還付に成功しました。しかし、相続人数によって、相続税は異なります。そのため、相続する財産の金額が大きいからといって、還付される額が大きいというわけではありません。
—過去にはこんな例も・・・
当初、相続税を4000万円程納めた方から相続税還付の依頼を受け、結果3600万円程の還付に成功しました。この方の場合、先に依頼をした税理士が相続税に対する知識がほとんどない状態だったため、評価減できる箇所などを多数見落としていたことが原因でした。
▶専門家選びのポイント
相続専門の税理士に依頼すること
例えば、以前から付き合いのある顧問税理士にお願いをしてしまった結果、土地(不動産)の評価等の知識が不足しているため、相続税を多く払いすぎてしまった。ということがあります。顧問税理士の場合、会社や個人の確定申告には強いが、相続には詳しくないということがあります。
見極める方法
相続手続きに関する質問をいくつかしてみて、その場で明確に回答できる場合には、相続に慣れている税理士と判断することができるでしょう。相続に強い税理士の場合、土地(不動産)の評価についても知識を深めることができるので、誤った評価をされてしまう可能性は低くなると思います。
最後に…決して安くない相続税。その相続税を必要以上に多く支払ってしまう・・・。なんて事態はできれば避けたいはずです。仮に払いすぎてしまった相続税も、被相続人がお亡くなりになってから5年10ヶ月以内であれば、還付することができるかもしれません。相続税の払い過ぎを避けるために、これから相続を考える方も、既に相続税を払いすぎてしまった方も、相続専門の税理士にご相談をすることをおすすめします。
医者に、内科、外科、心療内科等専門分野があるように、
税理士をはじめとした専門家にも、専門分野があります。
相続税は特に専門性の強い税務となります。
弊社は相続税還付、申告に対応できる専門家と提携しております。
まずは気軽にお問い合わせくださいませ。